CORPORATE SITE

横河のリーダーXトーク

「誠実さ」は魅力になるのか
誠実とはなにか?

「誠実であれ、良いものをつくれ」という創業者・横河民輔の思想は、今の横河建築設計事務所のなかにどう浸透し、どう解釈されているのか。誠実というキーワードからあぶりだされる「横河イズム」、組織の中核を担うリーダーたちの矜持とは。

Talk Member

  • 佐野 広高

    設計室 建築設計部 次長

  • 増岡 陽一

    技術室 環境設計部 次長

  • 市原 正大

    技術室 監理部 次長

  • 野口 淳

    設計室 建築設計部 次長

  • 樽井 浩三

    企画室 部長

Theme 01

樽井 ここにいる皆さんは実務、僕は営業。営業というのは仕事をとってきて売り上げを上げることが責務なので、長いおつきあいのあるお客さんも新規のお客さんも、担当者は熱量をもって営業していく。けれども「今、人手が足りないから受注できません」と仕事を断らざるを得ないこともあって、それでは営業の機会を本当に逃してしまう。そこは非常にジレンマに感じているところなのです。20年前くらいの皆さんの若かりしころは、一つひとつの案件に担当者がいたけれど、今はグループでやっている。この取り組みの変化は、要求されている業務の質と量が多くなってきているということなのだろうか。

佐野 業務がものすごく複雑化しているのは間違いないですね。平成初期と、令和の今では申請行為一つとってもはるかに違う。

野口 プロポーザルに取り組んでいると、労力も時間もお金もかけて仕事を取る大変さはすごくよくわかるんです。新規の仕事をやりたいけれど人手が足りないというジレンマは自分のなかにもある。設計でいうと、業務量は非常に増えてはいるけれど、そこは効率の上がっている部分で作業量を縮めたい。

市原 国が生産性を上げよ、働き方改革だと言っているのは、効率を上げて就労時間を減らすということだけど、業務量が増えているのも事実。効率を上げているのに仮に昔と同じような長時間の仕事をしていたら、精神的にまいってしまいますね。

佐野 実態として合理化はされているけれど、増えた業務量とのバランスがどうなのかは、定量的にはわからない。意匠でいえば、一番時間をかけたいのは作図ではなくて考え方の整理、クライアントへの提案・交渉といった否応なしに多くある接点、対応策をつくる部分だからね。そのためにはさらに効率化をと言わざるを得ない。一方で複雑化と合理化のなか、昔に比べて仕事に対する熱量が今の若い人にもあるか? と言えば、僕はあると思っている。モチベーションもある。待遇や環境を整えないといけないという点が課題でしょう。

市原 監理は営業とはあまり接点がないんです。メインの仕事はあくまでお客さんに対し、信頼をなくさないように品質を監理するという部門です。

樽井 業務の最後の最後が監理だから営業的にも重要な接点だと思います。お客さんに、「横河にお願いしてよかったね」と信頼されてフィニッシュしてくれるのが営業としてはいちばんうれしいし、ありがたいんです。

Read more

Theme 02

増岡 私は「仕事」と「業務」という言葉を意図的に分けて使うようにマインドセットしています。たとえば「仕事」が設計、「業務」が製図であるというようなとらえ方。どちらが上、どちらが下という意味ではなく、若い人が膨大な「業務」でいっぱいいっぱいになって、潰れてしまうことを防ぎたいからというところもある。「業務」をオペレーターに協力いただくことで区別化、効率化できれば「仕事」に充てる時間が増え、楽しくなると考えている。

樽井 例を挙げると、現状では増岡さんは「仕事」と「業務」を一人ですべて担って完結させていますね。それは若い人に一子相伝的に受け継いで教えていけることなんですか。

増岡 お客さんの目線になり、たとえば「あそこのトイレ、素敵だったから」と、またこの建物に来たくなるとか、単純にスペースに当てはめる「業務」をするのではなく、「利用者の視点に立って」設計をする「仕事」が大切だと思っている。今、教える側になって、おせっかいかなと思ってもそこは伝えたいんです。

市原 人間同士のコミュニケーションは昔の方がとれていたという意見をもつ年配の社員もいると思うけれど、昔は好き嫌いがハッキリしていて、各々主張が強かったと思う。人に疎ましがられるとか、ハラスメント云々が問題視される昨今だけれど、相手がなにを考えているかわからない、という状態にしておくのではなく、古株も中堅も新入社員も、仕事の中でそれぞれの主張を社内で発信することは大切なことだと思う。

Read more

Theme 03

野口 普通の製造業ならつくった商品を売るけれど、設計の営業は、まだそこにない設計を売るわけですよね。営業の方は、どのように横河の設計を売っているんですか。

樽井 僕の場合は横河の技術者を売る。実績だとかノウハウだとかを見せたり話したりするけれど、根幹は、技術者がお客さんの想いをどのように表現するのか。たとえば「野口の横河に仕事を出したい」と思ってもらいたいし、一人ひとり、横河イズムの根幹をわかっている技術者が、バラバラではなく横河にまとまっている。うちだからそれができると思っている。

佐野 樽井さんがそんなふうに営業をするときに、横河にしかできないなにか、横河だったらこれだというような明確ななにかというのをとらえておきたいけれど難しいですね。思想があって、魅力があるとしても、それを今の時代は発信につなげていく必要もある。

樽井 設計事務所は選定してもらう側だから、アピールは大事。でも外の人からうちの印象を聞くとよく言われるのは「横河さんは自己PRが下手だね」と(笑)。他社では、よく見せる表現、しゃべり方一つとっても、フィードバックしながら手法をブラッシュアップしていく。うちはPRが下手と思われていても、誠実さや歴史など、独特のエッセンスによって仕事を得られているのだろうけれど。

佐野 スタッフみんなが、もっともっと「誠実であれ、良いものをつくれ」という横河のアイデンティティ、横河イズムを見える化して発信しなければいけないですね。

Read more

Theme 04

野口 ゼネコンの設計、アトリエ系事務所、その中間に我々組織系設計事務所があると思っている。技術力、デザイン力を兼ね備え、我々横河が“よりよいもの”として存在し続けるにはどうあればよいのか。私は、中間にいるからこそ見える強みを強化していくことで生き残っていくことができるのではないか。

佐野 設計以外で、建設コンサルタントも注目を集めているよね。

市原 建設コンサルタントがなにをやっているかというと、端的に言えば、主に利益を出すために行う事業計画ですよね。

佐野 創業者の横河民輔が会社を興したとき、建物の設計とともに事業計画を提示していたというエピソードがあるけれど。

市原 明治の黎明期だから、新しい事業がどんどん増えていった時代。そのころの事業計画は、現代のようにがっちり計画を組んでその収支を計算して利益を…というのとは違って、チャレンジャー精神の発露だった。返済計画を出すためには事業計画書がないといけないから、それを手伝う会社があったそうですよ。

樽井 コンサルタントだけに特化した会社が増えている現状。昔は銀行のシンクタンクが収支計算をしたり、お金を貸すことで利益を上げる人たちが関わったりして、それがコンサルの元々の姿だと思う。

佐野 そこに特化した会社にコストをかけてでも事業計画を整えたいから、コンサルが建設のスキームに入ってくるのが今の時代。従来は設計事務所がその業務を担っていたけれど、時代の要請として特化する会社が必要になってきた。僕らは組織系事務所として各部署を抱えているけれど、組織がコンパクトなことで部署間のつながりがうまく機能していることが大きな武器だと思う。絶妙なバランスと規模感で構造、設備、監理、営業、意匠も、お互いを侵食しつつ、オールラウンダーとしてやってきている。それを我々の強みとして、内側にいる者としても、外に対しても、老舗横河はこれからこう仕事していくんだというロードマップは見たいし、見せたいなと常に思うね。

Read more

Member Profile

  • 誠実さとは「お客さん思い」であること

    「横河イズムの誠実さとは『お客さん思い』であること。昔はクセの強い先輩方と一緒に外に出て自然と身につけてきた。今は若い人を巻き込んでものごとを決め、皆が納得するようなシステムをつくり上げていくべき時代。世代は移ってきたが『お客さん思い』という横河独特の背骨が一本、通っていると思う」

    佐野 広高

    設計室 建築設計部 次長

  • 円陣を組む

    「昔から先輩に、常々『自分本位ではいけない、人を思え』と育ててもらってきた。最近では、面倒くさがられるかなと思いながらも、要所要所で『円陣を組もうよ』と伝えている。それによってモチベーションが上がり、見えない効率化にもつながっていると信じている」

    増岡 陽一

    技術室 環境設計部 次長

  • 客観的評価としての誠実さ

    「横河のポリシーに誠実さを謳うのはもちろんいい。しかし大事なのは世の中の設計事務所と比較して身びいきをすることなく、客観的評価として誠実であるかどうかだ。やるべきことをやり、設計事務所として誠実に仕事を全うした結果、得られた信頼が最も大切な評価だと思う」

    市原 正大

    技術室 監理部 次長

  • 先輩のふるまいを、ふと思い出す

    「入社した当初、『誠実であれ、良いものをつくれ』というスローガンがあることを知り、実際に経験を重ねて年をとってくると、ふと先輩のふるまいを、あれは最終的に良いものをつくるための横河イズムが身に染みついた動きだったのだなと思い出すことも。自分もそうでありたいなと思っています」

    野口 淳

    設計室 建築設計部 次長

  • 「誠実」を照れずに言える

    「創業者が『誠実であれ』という言葉を掲げてくれたおかげで、誠実とはなにかと議論もするし、常に誠実さを試されていると意識もする。誠実さが横河イズムのコアです、と照れずに言うことができる。営業として、売り込むものは横河の根幹にあるヒューマンなものだと思っている」

    樽井 浩三

    企画室 部長

写真:澁谷 高晴