PROJECT STORY 03

旭中央病院 再整備のあゆみ

地方独立行政法人 総合病院国保旭中央病院

01_診療圏100万人の拠りどころとして

旭中央病院の診療圏は二次医療圏を越え、千葉県東部から茨城県南東部にわたる12市8町、総人口100万人のエリアといわれています。外来患者は一日3,000人以上、救急車受け入れ年間6,000台以上、年間手術件数8,000件以上と、一般外来から高度急性期医療まで地域医療の拠点として、欠くことのできない存在となっており、「すべては患者さんために」の理念のもと、良質で安全な医療を提供し続けています。
開院以来60年間にわたり、地域の基幹病院として地域医療の水準向上に努め続け、地域の医療需要に応えるために数次にわたる増改築が行われてきた結果、診療機能が分散し、患者・職員動線が複雑化・長距離化し、サービスと診療効率の低下を招いていました。また、建物の老朽化と耐震性の問題により基幹災害医療センターとしての役割を十分に果たせない恐れがありました。
この再整備事業にあたり「分散した診療機能の集約」「診療環境の改善・向上」「災害に強い病院」を目標に掲げ、安全で人に優しく効率的な病院づくりを目指しました。

建替え手順

02_新棟増築+既存棟リノベーションによる診療機能の集約

既存棟のリノベーションを行い活用し、新棟との機能分担を図りつつ有機的に接続することで、効率的な機能連携を確保しました。新棟(本館)の低層階に急性期医療の中核となる中央診療部門を集約し、5階以上を病棟としてます。外来部門および管理部門が主体となる既存1~3号館を合わせて病院機能が完結する計画で、分散していた機能を集約することにより、患者さんやスタッフの皆さんの移動距離、移動時間、精神的負担が軽減され、安全・安心で先進的かつ高品質な医療提供環境を整えました。

新棟(本館)の竣工引き渡しを目前に3.11東日本大震災が発生しました。免震構造である本建物に被害はなく、震災発生時には、既存棟の患者さんたちを新棟に緊急避難させ、安全確保に協力しました。震災を通じて、建物に対する非常に大きな信頼を得ることができました。

  • 全体図
病棟平面図

03_見守りやすさと運用の柔軟性を兼ね備えた
「多翼型(井型)病棟」

病棟フロアは廊下が短く見通しのよい「井」型の平面形を採用し、高い個室率と看護動線の短縮を両立させました。ウイング単位でゾーンを明確に形成でき、感染症病室や無菌病室など特殊な病室を機能的に配置することが可能となっています。ウィング単位で区画すれば、他の病室とは完全にエリア分けができるため、COVID-19など新興感染症患者受入れに際しても対応しやすい病棟形態です。
各フロア東西の病棟スタッフステーションはエレベータコアを中央にして隣接させ、スタッフの移動・相互連携を容易にするとともに、重症室エリアを含めた管理区画の明確化により、効率性と安全性を高めています。

  • 4床室
  • 1床室
  • デイルーム
食堂棟アイソメ

04_職員食堂 「OASIS」

本計画にあたり、絶えず緊張を求められる業務にあたるスタッフの皆さんの「リフレッシュの場」「コミュニケーションの場」として親しまれる空間づくりを目指しました。
座席数は約300席で、昼食時には約700食を提供できます。食堂エリアは、使い手の様々なシチュエーションに合わせて、南側に面した「カウンター席」、200名規模の会合ができる「中央エリア」、天井高を抑え、落ち着きを持たせた「ボックス席」、中庭に面した「小グループエリア」、ゲストルームとしての「和室」の5つのエリアを用意し、「食堂」としての枠を超えた利用も視野に入れています。
構造フレームは18mのロングスパンとしてフレキシブルでゆとりある無柱空間としながら、外壁面の足元をガラスとし、外部への視覚的つながり・広がりをもたせ、明るく開放的な室内空間としました。スタッフの皆さんから「OASIS」と名付けられ、親しまれています。

05_看護師宿舎 「ソレイユ」

本建物は、保育所併設型の看護師宿舎です。現在のニーズに合った居住環境に加え、育児と仕事を両立できる就労環境を提供することにより、今後の看護師の採用・定着を促進することを目的とし、本プロジェクトがスタートしました。
「ふれあい、絆を育む」をメインテーマに掲げ、個のプライバシーを確保しつつ、交流が促進・活性化され、仲間と暮らすメリットが享受できる環境づくりを心掛けました。
外観デザインは、地元の景勝地である屏風ヶ浦が織りなす水平ライン、寄せては返す波の動き、海水面に映る光の移ろいなど、身近に見られる豊かな風景をコラージュし、外装に取入れ、旭らしさを表現するとともに旭中央病院ブランドの象徴として「凛とした佇まい」を追求しました。
看護師の皆さんには「ソレイユ」という愛称で親しまれています。既に入居された方からは大変住み心地がよいと大好評で、QOLも向上し、中には、自宅からの通勤を止めて入寮する方もいらっしゃるようです。

住戸断面

[構造計画]
住戸部分はスラブ段差に合わせた小梁を設け、その他を一枚スラブで構成し階高の抑制を図りました。中庭に面した共用廊下は片持ちスラブとし、横連總とすることで視界が広がる開放的な空間としました。
[照明計画]
夜間は水平に連続するライン状の間接照明が内外を照らし、個性的な表情を持つ、明るい中庭を形成しました。
[換気設備計画]
共用廊下のサッシに給気グリルを取り付け、廊下からつながる階段室頂部に重力換気窓(スウィンドウ)を設けることで、給気風道を形成し、効率的な自然換気を行っています。